荒田八幡-せきと呼吸と内科のクリニック|呼吸器内科・内科

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このブログでは、クリニックのこと、健康のこと,クリニックの日常など発信していきます。

睡眠時無呼吸症候群の話

2021/11/13
2000年代前半、鉄道運転手さんの居眠りによる鉄道事故にて、一気に有名になったのが
「睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome=SAS)」
です。
あの事件以降、各鉄道会社では積極的にSASの検査を健診でも取り入れるようになりました。

また、日中の眠気による事故など以外にも、様々な生活習慣病の裏で暗躍している
「裏ボス的な存在」
といえる疾患であることが分かってきました。

例えば健常者と比べて、SASに罹患している人は

・糖尿病、耐糖能異常、脂質異常症のリスク:1.5倍
・高血圧症のリスク:2倍
・虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)のリスク:3倍
・脳血管疾患(脳梗塞など)のリスク:4倍
・居眠りなどによる交通事故などを起こすリスク:7倍

という結果もでているほど、様々な疾患の裏で暗躍していることが分かります。

痩せている方でもSASの方はいらっしゃいますので、上述のような結果を考えると、生活習慣病を治療している方々にも、もしかしたら裏に睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性も考えなくてはいけないなあと思います。
実際、SASの治療を行うことで、高血圧が改善してきたりといったことはあります。また、こういった疾患の改善を図るだけでなく、
質のいい睡眠をとることは、生活の質の向上につながります。

いびきや熟眠感が得られない、日中の眠気がひどいなどの症状がある方や現在高血圧症などで治療を受けている方々でも、簡易検査であれば自宅で一晩機械を装着して頂くだけで検査は可能ですので(結果解析には10日前後時間を頂きます)、一度は受けて頂いてもいい検査だと思います。

睡眠時無呼吸症候群の簡易検査は当クリニックでも行うことができます(機器の使用状況によっては、簡易検査施行の順番待ち=別日を受診して頂くことになります)ので、どうぞお気軽に受診して頂ければと思います。

吸入ステロイドの話

2021/11/9
吸入ステロイドは主に
「気管支喘息・咳喘息」
の治療に使用されるお薬です。

ステロイドと聞くと、多くの方が
「強い薬」
「副作用多い怖い薬」
「なるだけ使わないほうがいい薬」
とネガティブな想いを持っているかもしれません。

確かに、言い得て妙な部分もあります。

ただ、ステロイド製剤全般で言えるのは
「どういった疾患を考えて」
「どのくらいの投与量を」
「どのくらいの期間使用するか」
という計画性を持って使用するなら、非常に有用な薬であり、様々な疾患に奏功する薬です。

当然呼吸器内科分野でもよく使用されます。

中でも、
「気管支喘息・咳喘息に対する吸入ステロイド療法」
は確固たる実績もあり、効果や副作用の面からも、非常に安全かつ重要な治療のひとつであり、
「喘息治療の柱」
となります。

まず効果について。
喘息は「アレルギー性気管支炎」と言ってもいいように、気管支に「アレルギー性(好酸球性)炎症」が起こり、気管支が敏感になり(気道過敏性の亢進と言います)、様々な刺激により気管支が細くなってしまい(気管支のれん縮)発作が起きます。
吸入ステロイドが普及する以前は、この発作が起きた時に対処するしかなかったのです。

ただ、吸入ステロイドが普及した後は、治療そのものの考え方が変わりました。
吸入ステロイドをしっかり吸入することにより、気管支の「アレルギー性(好酸球性)炎症」を強力に抑え、
「発作を起こさないように安定化させる治療」がメイン
になったのです。
「症状に対しての治療」から「もっと根本的な治療」を行えるようになったと言えます。
事実、実績として吸入ステロイド治療が普及してから、いわゆる「喘息死(喘息発作による死亡)」は確実に減少しました。

そして、副作用について。
吸入で使用する場合、気管支に局所的に効果を発揮することができればいいので、かなり少量のステロイド吸入で効率的に効果が発揮されます。要は
「使用するステロイドの量はかなり少なくてすむ」
と言えます。吸入剤も血液へ吸収される分も0ではありませんが、吸入投与されるステロイドの量が少ないので、血中へ吸収されるいステロイドも少なくてすみます。
ステロイド製剤を内服投与する場合はmg単位であることがほとんどですが、吸入の場合㎍単位です。長期使用していても全身的副作用はかなり少ないと言えます。
ただ、吸入した後に「うがい」を欠かさず行うことが重要です。
吸入により口腔内に広がったステロイドは、口腔粘膜にも広がります。これを放っておくと、口腔粘膜の免疫能が低下してしまい、口内炎や口腔内カンジダ(カビの一種)症を起こすことがあります。また、声が枯れることにもつながります。

このように、気管支喘息の治療では、吸入ステロイドは非常に有効かつ安全なお薬です。
その効果や安産性を十分理解して頂きk、しっかりと吸入を続けることがとても重要です。
「よくなったから、いいや~」
と勝手に中止しないでください。自己判断での吸入ステロイドの中止は、急速な増悪につながる原因にもなります。

気管支喘息は、吸入ステロイド療法を中心とした吸入療法をしっかりと行うことで、生活の質を保つことができる疾患です。
長引く咳や喘鳴(ヒューヒュー)など気になる症状があれば、お気軽に受診してください。

口腔内ケアと肺の病気

2021/11/6
口の中の衛生面に気をつけることは、肺の病気の予防にもなります。

口の中(口腔内(こうくうない)と呼びます)が不潔になると、歯に垢が貯まります。この歯の垢(歯垢=プラーク)、ただの食べ残しではありません。細菌と代謝物が混ざり合ったもので、白色~黄色のネバネバしたものです・・・。この歯垢ができて2日間くらい経つと、歯石ができてきます。歯石は、その名の通り石のように固いので、簡単には取れなくなります。
こうなると、口腔内で様々な細菌が増えやすい下地ができてしまうのです・・・。歯石の中に閉じ込められた細菌。こんな環境でも育ってしまう
「嫌気性細菌(けんきせいさいきん)」
が厄介なのです・・・。

嫌気性細菌は、通常でも口腔内などにも普通に存在する細菌(常在菌と言います)なのですが、この嫌気性菌が誤嚥されてしまったりして肺に落ち込んでしまうと、様々な病気を起こします。

・肺化膿症(肺の内部に膿が貯まる)
・膿胸(胸腔内に膿が貯まる)

といった感染症が代表的です。
症状としては、突然の高熱、膿のような痰、悪臭を伴う痰、血痰、せきなどが挙げられます。
治療は抗菌薬による治療や排膿がメインとなります。

ちなみに、院長ですが、2020年9月に突然の発熱、悪寒、血痰を自覚しました・・・。
コロナ禍真っ只中、しかも医療従事者です。焦りました・・・。
近くの救急クリニックを受診し、新型コロナウイルスの検査を行い陰性。ほっとしたのもつかの間、胸部レントゲンとCTで肺に腫瘤があり・・・( ;∀;)
とてもドキドキしてしまいました・・・、呼吸器内科医なのに・・・。

結局精査を受けたところ、
肺化膿症
であり、抗菌薬内服にて完治しました・・・。

ただ、院長自身、歯には自信があったのです。虫歯もできたことないですし、歯科も30年以上受診していません。
しかし、肺化膿症になったからには・・・
歯科受診は必須です!

そして、院長、30年以上ぶりに歯科医受診しましたところ、

中等度歯周病!+虫歯2か所・・・( ;∀;)

との診断でした(-_-;)

今院長は生まれ変わり、歯磨きオタクとなり、歯科へも定期通院しています。
現在は歯周病も完治し、いい感じの歯茎状態を保っています。

みなさんも、症状などはなくても
「定期的な歯科受診」
してみてはいかがでしょうか?
様々な病気を未然に防ぐことができるかもしれません。
しかも、口腔内がきれいって気持ちいいですよ。

呼気一酸化窒素(NO)測定器

2021/11/4
「長引く咳」の原因を突き止めて、治療を行っていく。
簡単なようで実は難しく、逆に聴診などで「あっ、この疾患」と分かる場合もあり、とても奥深いです。

当然胸部レントゲンを撮影し、緊急性・重篤な疾患の有無をチェックするのが第一歩ですが、
「胸部レントゲンでは異常なし」
というパターンが多い印象もあります。

「レントゲン異常なし」
だった場合、
「咳のでる時間帯は?」
「これまで同じようなエピソードはなかったか?」
「これまでどういった治療が効果があったか?」
「季節による差は?」
といった問診で鑑別を絞っていくのですが、やはり難しいことが多いです。

そんな中、とても有効な検査が
「呼気一酸化窒素(NO)測定」
です!



nobreath
この子供が持ってるとても手軽な機器が
「NO breath」
という呼気NO測定器です。

長引く咳の原因としては
・気管支喘息
・咳喘息
が多くなってきますが、これらの疾患では「アレルギー性気管支炎」が起こっている状態です。アレルギーに深く関与する「好酸球」という白血球の仲間が絡んでくる炎症なのですが、その好酸球が絡んでくる炎症が気管支に存在していると、
「吐いた息の中の一酸化窒素(NO)濃度が上昇」
するのです。

この「呼気NO検査」が行われはじめたばかりの時は、「検査用の袋に息を吐きこんでもらい、検査室に持っていく」という手間がかかりましたが、今では、写真のようにとてもコンパクトになりました。

あくまでも個人的な意見ですが、この「呼気NO測定」が簡便に行えるようになってから、「長引く咳の原因診断」はかなり行いやすくなったと思いますし、
「喘息と診断されていなかった「隠れ喘息」の患者さんの診断・治療」
「喘息の治療効果判定」
などにも役立つ検査なので、非常に重宝しています。

当クリニックでも当然行える検査ですので、「長引く咳」でお困りの方や喘息治療を受けている方のお役に立てればと思います。
お気軽にご相談ください。TEL: 099-297-4600
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