「呼吸器内科」とは聞きなれない科目かもしれませんが、実はとても身近な科目です。呼吸器とは「呼吸することに関わる内臓器官」のことで、声を出す際に必要な声帯よりも下位の部分の総称です。
専門的になりますが、気管、気管支、肺、また肺が納まっている胸腔(きょうくう:肋骨や横隔膜で囲まれた空間)内の病気も診療しています。
「呼吸器ってどんな臓器?」と聞かれると、私はよく患者さんに「ブドウの房があばら骨でできた鳥かごに入っている状態を思い浮かべてみてください」とお話ししています。ブドウの実をつなぐ茎の部分が「気管」、茎が枝分かれして細くなったものが「気管支」、その先にあるブドウの実が「肺胞(はいほう)」です。このブドウの実である肺胞が約3~6億個集まってできているのが「肺」になります。
つまりブドウの房が多数集まり「肺」を作っていると思って頂ければ分かりやすいかな?と思います。また、そのブドウの実(肺胞)の表面に網の目のように細い血管が張り巡らされてあり、これにより「ガス交換(酸素の取り込みと二酸化炭素の放出)を行っています。
また「胸郭(きょうかく)」と呼ばれる「肋骨や胸骨、胸椎(胸の部分の背骨)といった骨格」と「横隔膜(ハラミです)」で囲まれた空間(胃や心臓も囲ってます)のうち、「肺が収まっている部分」のことを「胸腔」といい、その内側から肺の表面を覆っている薄い膜を「胸膜(きょうまく)」といいます。
これだけ多くの部分で構成されている呼吸器。病気も本当に多彩です。
「どこの部分で」、「何が原因で」、「どんなこと」が起きるのか?と考えてみてください。
「どこの部分で?」というだけでも多彩なのですから、「何が原因で?」ということも加わると更に多彩です。
今猛威を払っている新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスといった様々なウイルス、その他細菌や真菌(カビ)、結核などによる感染症。患者さんも多数いらっしゃる気管支喘息・咳喘息の原因となるアレルギー。生活環境を反映するような外的原因(タバコや石綿、化学物質など)。また、癌死のトップに居座る肺がんといった悪性腫瘍やその他良性腫瘍。また、ほかの全身疾患に伴って肺に病気が生じてくることも多くあります。
私の恩師でもある先生が常々仰っていた「肺は環境を映す鏡である」という言葉が今も印象に残っているのですが、本当に多彩で、皆さんの生活に意外と密着しているのが、呼吸器内科という診療科目です。また、一般的な内科外来をやっていて一番多い受診理由は「咳」です。
こんなに身近な科目、呼吸器内科。どうぞ気軽に受診して頂ければと思います。